棚卸資産回転日数とは?在庫の重さを見る指標
棚卸資産回転日数とは
棚卸資産回転日数は「在庫が売れるまで平均何日かかるか」を示します。長くなるほど在庫負担や値下げリスクに注意が必要です。
計算式
棚卸資産回転日数 = 棚卸資産 ÷ 売上原価 × 365
使い方
- 在庫効率を確認する
- 在庫増加による営業CF悪化を把握する
- CCCの構成要素として使う
注意点
- 業種や季節性で水準が大きく変わる
- 在庫評価損のリスクを見る
- 成長のための先行在庫と滞留在庫を区別する
棚卸資産回転日数の読み方
棚卸資産回転日数は、在庫(棚卸資産)が、年間の売上原価の何日分にあたるかを示す指標です。式は棚卸資産÷売上原価×365で、仕入れた商品や作った製品が、売れるまでに平均して何日倉庫にあるかの目安になります。日数が短いほど在庫の回転が速く、在庫に縛られる現金が少ないことを意味します。
在庫は、売れなければ値引きや廃棄で損失になるリスクを持ちます。そのため、日数が延びていくのは、売れ行きの鈍化や、仕入れ・生産の過剰を示すことがあります。一方で、安定供給のために部品や原料を多めに持つ、新商品の発売前に積み増すといった、前向きな理由で延びる場合もあります。売上原価を分母にするのは、在庫が原価で計上されているからです。
実在企業で見る棚卸資産回転日数の計算例
住宅・建設の大和ハウス工業(1925)は、日数が急に延びた例です。2021年3月期は約129.4日、2023年3月期は約192.9日、2026年3月期は約267.7日でした。売上原価約4兆3,350億円から逆算すると、棚卸資産は約3兆1,789億円で、2021年3月期の約1兆1,702億円から約2.7倍になっています。売上原価の増加は約31%なので、在庫の増え方が売上の伸びを大きく上回っています。住宅・不動産を手がける会社は、販売用の土地や建物を棚卸資産に計上します。増えた中身は、有価証券報告書の注記で確認してください。
靴の小売りのエービーシー・マート(2670)は、日数が長いものの、ほぼ一定の例です。2021年2月期は約210.2日、2022年2月期は約183.5日、2023年2月期は約230.2日、2025年2月期は約181.2日、2026年2月期は約208.3日と、180〜230日の範囲で動いています。2026年2月期は、売上原価約1,867億円から逆算して、在庫は約1,066億円です。多数のサイズ・色を揃える業態のため、在庫が厚くなる特徴がありますが、年ごとの上下の理由は、このデータだけでは断定できません。
化学の信越化学工業(4063)は、数年かけてゆっくり延びた例です。2021年3月期は約139.8日、2025年3月期は約178.2日、2026年3月期は約170.5日でした。売上原価約1兆6,932億円から逆算すると、2026年3月期の棚卸資産は約7,909億円で、2021年3月期の約3,650億円の約2.2倍です。化学は、原料や製品の在庫が厚くなりやすい業種です。
業種による水準の違い
棚卸資産回転日数は、扱う商品の性質で決まります。毎日売れる食品や日用品は短く、種類やサイズを多く揃える小売りや、素材・部品を多く持つ製造業は長く、住宅や不動産の開発は在庫の入れ替わりに年単位かかります。本文の例では、エービーシー・マートが約180〜230日、信越化学が約137〜178日、大和ハウスが約129〜268日でした。
日数が長い業種は、需要の予測が外れたときの損失が大きくなります。業種の標準を知ったうえで、同じ会社の数年の推移と、売上の伸びとの釣り合いを見ます。在庫が売上以上に増えていないかが、最初のチェックポイントです。
よくある誤解
1つ目は「日数が短いほど良い」という見方です。欠品が増えて機会を逃すほど在庫を削っても、収益は伸びません。2つ目は、日数が延びた=不良在庫という決めつけです。増産に備えて原料を積んだり、需要の見込みで製品を増やしたりして、日数が延びる場合もあります。
3つ目は、棚卸資産の範囲の違いです。製品のほか、仕掛品、原材料、販売用不動産などが入るため、業種ごとに日数の意味が変わります。4つ目は、期末残高を使うため、決算期末の在庫の積み増しや、季節性の影響を受けることです。1年の数字ではなく、数年の推移を見ます。
チェックの手順は、まず在庫の日数と売上原価の伸びを比べることです。エービーシー・マートは、売上原価が約1.7倍に増える間も日数が約180〜230日の範囲に収まり、在庫は逆算で約634億円から約1,066億円へ増えました。在庫が売上と歩調を合わせて増えているなら、過剰在庫のサインとは読みにくくなります。
他の指標との組み合わせ方
在庫の増え方が売上以上かは、売上高や売上総利益率とあわせて確かめます。在庫が現金にどう響いたかは、営業CFやアクルーアル比率で分かります。売上債権回転日数、仕入債務回転日数とあわせればCCCになり、運転資金全体の重さが見えます。
データの出所
棚卸資産回転日数の計算例は、有価証券報告書(EDINET)をもとにラジ株ナビが整理した財務データ(2026年10月時点)の「棚卸資産回転日数」と「売上原価」から取っています。棚卸資産の金額は、売上原価×日数÷365で逆算した概算です。対象は大和ハウス工業(1925)の2021年3月期・2023年3月期・2026年3月期、エービーシー・マート(2670)の2021年2月期〜2026年2月期、信越化学工業(4063)の2021年3月期・2025年3月期・2026年3月期です。特定の銘柄の売買を勧めるものではありません。
よくある質問
棚卸資産回転日数は何日くらいが適切ですか?
業種で大きく違い、一律の基準はありません。本文の例では、靴の小売りのエービーシー・マートが約180〜230日、化学の信越化学が約137〜178日、住宅の大和ハウス工業が約129〜268日でした。同業他社と自社の推移で見ます。
在庫が増えると、すぐ危険ですか?
増えた理由を確認します。大和ハウス工業は、5年で在庫が逆算で約1兆1,702億円から約3兆1,789億円へ約2.7倍になりました。売上原価の増加(約31%)を大きく上回っているため、注記で内訳を確認する価値があります。
棚卸資産の金額は、どう逆算しますか?
売上原価×日数÷365です。エービーシー・マートの2026年2月期は、売上原価約1,867億円×約208.3日÷365で、在庫は約1,066億円になります。ラジ株ナビの日数は有報の数値からの計算で、概算として使います。
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データの出典と更新
この用語解説はEDINET財務データ、決算書分析、株式投資で一般的に使われる財務指標の定義をもとに整理しています。最終更新日: 2026-11-01。
著者・運営者
本ページは、ラジトレが運営するラジ株ナビ編集方針に基づき、日本株の財務分析、EDINETデータ、決算短信、配当情報をもとに作成しています。