売上総利益率とは?粗利率で見る価格競争力
売上総利益率とは
売上総利益率は「売上から原価を引いた粗利益が何%残ったか」を示します。高いほど価格競争力や付加価値が高い可能性があります。
計算式
売上総利益率 = 売上総利益 ÷ 売上高 × 100
使い方
- 商品の付加価値や価格競争力を見る
- 原価高の影響を確認する
- 営業利益率と比べて販管費の重さを把握する
注意点
- 業種によって水準が大きく異なる
- 会計処理や原価分類の違いで比較しにくい場合がある
- 粗利率が高くても販管費が重いと利益は残りにくい
売上総利益率の読み方
売上総利益率(粗利率)は、売上高から売上原価を引いた売上総利益(粗利)が、売上高の何%にあたるかを示す指標です。商品やサービスを「いくらで売り、いくらで仕入れ・製造したか」という、事業の根っこの儲けやすさを表します。100円の商品が60円で作れれば粗利率は40%で、残りの40円から販売費や人件費などを賄います。
粗利率が高いほど、ブランド力や技術力などで価格を維持できている、または原価を抑えられている可能性があります。ただし、売上原価に何を含めるかは会社の会計処理で変わるため、水準の比較は同業種、できれば同じ原価の考え方の会社どうしで行います。見る中心は、同じ会社の数年分の推移です。
粗利率を1ポイント改善するには、売上1,000億円の会社なら粗利を10億円増やす必要があります。小さな差に見えても、営業利益の薄い会社にとっては大きな改善にあたるため、数ポイントの動きも見逃さないようにします。
実在企業で見る売上総利益率の計算例
医薬品の第一三共(4568)は、粗利率が高い会社の例です。2026年3月期は売上高が約2兆1,230億円、売上原価が約6,690億円で、粗利は約1兆4,540億円、粗利率は約68.5%です。2021年3月期の約64.9%から上がり続け、2025年3月期には約78.0%に達しましたが、2026年3月期は約9.5ポイント下がりました。売上原価が約4,158億円から約6,690億円へ約61%増えたのに対し、売上高の増加は約13%にとどまっています。理由は、このデータだけでは確認できません。
都市ガスの東京ガス(9531)は、売上が増えても粗利率が下がる例です。2021年3月期は売上高が約1兆7,651億円、粗利率が約31.3%でした。2023年3月期は売上高が約3兆2,896億円と1.9倍に増え、粗利は約6,932億円と増えたものの、粗利率は約21.1%に下がりました。2025年3月期は売上高約2兆6,368億円、粗利率約15.4%、粗利は約4,062億円です。原燃料の調達価格の影響を受けやすい業種ですが、各年の要因は決算説明資料で確認してください。
靴の小売りを手がけるエービーシー・マート(2670)は、粗利率が安定している例です。2021年2月期は約50.1%、2026年2月期は約50.7%で、この間の売上高は約2,203億円から約3,786億円へ約1.7倍に増えましたが、粗利率はほぼ変わりませんでした。2026年2月期の粗利は約1,919億円です。
業種による水準の違い
粗利率の水準は、ビジネスモデルで決まります。医薬品やソフトウェアのように、開発に投資して知的財産で稼ぐ業種は高く、第一三共は60〜70%台です。靴の専門小売りは50%前後(エービーシー・マート)、ガスや電力のように原燃料を仕入れて販売する公益事業は10〜30%台(東京ガス)と、幅が広くなります。
粗利率が低いこと自体は悪いことではありません。薄利多売の卸売や食品スーパーは、回転の速さで稼ぐ設計です。業種ごとの典型的な水準を知ったうえで、同じ会社の中で粗利率が上がっているか下がっているかを見ます。
粗利率が低い業種ほど、原価の上昇を価格に転嫁できるかが利益を左右します。仕入れや原燃料の値上がりを売価に反映できているかは、売上高の伸びと粗利率の動きを並べると推測できます。
よくある誤解
1つ目は「粗利率が高い会社ほど儲かる」という見方です。粗利率が高くても、販売費や研究開発費が重ければ、営業利益率は低くなります。第一三共は研究開発費率が20%を超えており、粗利率の高さがそのまま利益にならない構造です。
2つ目は、粗利額と粗利率の混同です。東京ガスの2023年3月期のように、粗利額が増えても粗利率が下がる年があります。3つ目は、会社ごとの原価の定義の違いで、販売費・物流費・減価償却費をどこに入れるかで、同じ業種でも粗利率がずれます。また、銀行や保険など売上総利益を開示しない業種もあります。
粗利率を使うときの手順は、まず同じ会社の5〜6年の推移を並べ、上がっているか下がっているかをつかむことです。次に、売上高の伸びと粗利額の増え方を比べます。第一三共の2025年3月期までは、売上高の拡大と粗利率の上昇が同時に進み、粗利額は約6,242億円(2021年3月期)から約1兆4,705億円まで増えました。最後に、変化の理由を決算説明資料の売上原価の説明で確認します。
他の指標との組み合わせ方
粗利から販管費を引くと営業利益になるので、粗利率と販管費率、営業利益率をセットで見ると、どの段階で利益が削られているかが分かります。研究開発費率とあわせれば、技術で稼ぐ会社かどうかも見分けられます。高収益の会社を探すときの視点は、ガイドで紹介しています。
データの出所
売上総利益率の計算例は、有価証券報告書(EDINET)をもとにラジ株ナビが整理した財務データ(2026年10月時点)の「粗利率」「粗利」「売上高」「売上原価」「研究開発費率」から取っています。対象は第一三共(4568)の2021年3月期〜2026年3月期、東京瓦斯(9531)の2021年3月期・2023年3月期・2025年3月期・2026年3月期、エービーシー・マート(2670)の2021年2月期と2026年2月期です。特定の銘柄の売買を勧めるものではありません。
よくある質問
粗利率は何%以上あればよいですか?
業種で大きく違い、共通の基準はありません。本文の例では、第一三共が60〜70%台、エービーシー・マートが約50%、東京ガスが15〜31%でした。同じ会社の推移と、同業他社との差を見ます。
粗利率が下がったのは、悪化のサインですか?
一概には言えません。東京ガスの2023年3月期は、粗利率が約21.1%まで下がりましたが、粗利額は約6,932億円と前期より増えていました。売上原価の増加が、価格に転嫁できなかったのか、売上の構成が変わったのかを確認します。
粗利率と営業利益率は何が違いますか?
粗利率は売上原価だけを引いた段階、営業利益率は販管費や研究開発費まで引いた後の割合です。第一三共の2026年3月期は粗利率が約68.5%でしたが、販管費率も約35.4%、研究開発費率も約22.0%あり、利益率はそれらを引いた後の水準になります。
関連用語
データの出典と更新
この用語解説はEDINET財務データ、決算書分析、株式投資で一般的に使われる財務指標の定義をもとに整理しています。最終更新日: 2026-11-01。
著者・運営者
本ページは、ラジトレが運営するラジ株ナビ編集方針に基づき、日本株の財務分析、EDINETデータ、決算短信、配当情報をもとに作成しています。