研究開発費率とは?将来成長への投資姿勢を見る指標
研究開発費率とは
研究開発費率は「売上に対して、将来の製品や技術開発にどれだけ投資しているか」を示します。成長投資の強さを見る補助指標です。
計算式
研究開発費率 = 研究開発費 ÷ 売上高 × 100
使い方
- 将来成長への投資姿勢を見る
- 同業内で技術開発投資を比較する
- 利益率低下が成長投資によるものか確認する
注意点
- 研究開発費が多くても成果につながるとは限らない
- 業種によって必要水準が大きく異なる
- 短期利益とのバランスを見る
研究開発費率の読み方
研究開発費率は、研究開発費が売上高の何%にあたるかを示す指標です。新しい製品や技術を生み出すために、売上の何割を未来への投資に回しているかを表します。研究開発費は、効果が出るまで数年かかるうえ、成果が出るとは限らない支出なので、短期の利益を下げる要因にもなります。
研究開発費率が高い会社は、技術や新製品が競争力の源泉になっている会社です。ただし、率の高さだけでは成果は分かりません。同じ会社で率が維持されているか、売上の成長に結びついているかを、数年単位で確認します。また、研究開発費を費用にするか、開発段階の一部を資産に計上するかは、会計基準によって扱いが異なります。
実在企業で見る研究開発費率の計算例
医薬品の第一三共(4568)は、率が極めて高い例です。2021年3月期は、研究開発費が約2,274億円、売上高が約9,625億円で、研究開発費率は約23.6%でした。2023年3月期は約26.7%(約3,416億円、約1兆2,785億円)まで上がり、2026年3月期は約22.0%(約4,660億円、約2兆1,230億円)です。5年間で、研究開発費は約2倍に増えていますが、売上高が約2.2倍に伸びたため、率は約22〜27%の範囲に収まっています。
自動車部品のデンソー(6902)は、金額は増え、率は一桁台で動いた例です。2021年3月期は約9.97%(研究開発費約4,920億円、売上高約4兆9,367億円)、2024年3月期は約7.7%(約5,509億円、約7兆1,447億円)、2026年3月期は約9.2%(約6,901億円、約7兆5,400億円)でした。2024年3月期に売上が大きく伸びて率が下がり、その後は研究開発費を増やして率が戻っています。
精密機器のキヤノン(7751)は、売上の伸びを上回る速さで率が下がった例です。2020年12月期は約8.6%(研究開発費約2,723億円、売上高約3兆1,602億円)、2025年12月期は約7.3%(約3,393億円、約4兆6,247億円)でした。研究開発費は約25%増えましたが、売上高が約46%増えたため、率は約1.3ポイント下がっています。
業種による水準の違い
研究開発費率は、業種によって水準が全く違います。新薬を開発する医薬品は20%を超え(第一三共)、精密機器や自動車部品は7〜10%前後(キヤノン、デンソー)です。石油元売り、警備、建設のように、1%前後かそれ以下の業種もあります。
率が低い業種で率が高い会社は、技術で差別化する姿勢が強いと読めます。反対に、率が高い業種での減少は、競争力の低下の可能性もあります。同業他社と並べ、同じ会社の数年の変化を見ます。
よくある誤解
1つ目は「研究開発費率が高い会社ほど成長する」という見方です。投資が成果に結びつくかは別の問題で、第一三共のように率が20%台でも、利益の出方は年によって変わります。2つ目は、率の低下を投資の削減と見ることです。キヤノンのように、売上が大きく伸びて率が下がるだけで、金額は増えている場合もあります。
3つ目は、研究開発費の定義の違いです。IFRSの会社は、開発段階の費用を資産に計上できるため、日本基準の会社より費用が小さく見えることがあります。4つ目は、損益計算書に出るのは費用化された分だけで、実際の研究開発投資の総額とは異なる場合があることです。有報の「研究開発活動」の項目で、金額を確認できます。
チェックの手順としては、まず研究開発費の金額と率を両方並べます。デンソーは、金額が2021年3月期の約4,920億円から2026年3月期の約6,901億円へ約40%増え、率は約10%から約9.2%でした。次に、投資の成果が売上や粗利率に表れているかを確かめます。第一三共は、研究開発費率が20%台のまま、粗利率が約64.9%から2025年3月期の約78.0%に上がっています。研究開発費は、利益が苦しい年に削られやすい費用でもあるため、率が長期にわたり維持されているかは、経営の姿勢を知る手がかりになります。第一三共は6年間のうち5年が22%以上で、デンソーも約7.7〜10%の範囲を保っています。
他の指標との組み合わせ方
研究開発費率は、売上総利益率とあわせると、技術が価格に反映されているかが分かります。販管費率や設備投資比率とあわせれば、将来への投資の全体像が見えます。ガイドでは、成長株を探すときの視点を紹介しています。
データの出所
研究開発費率の計算例は、有価証券報告書(EDINET)をもとにラジ株ナビが整理した財務データ(2026年10月時点)の「研究開発費率」「研究開発費」「売上高」から取っています。対象は第一三共(4568)の2021年3月期・2023年3月期・2026年3月期、デンソー(6902)の2021年3月期・2024年3月期・2026年3月期、キヤノン(7751)の2020年12月期と2025年12月期です。特定の銘柄の売買を勧めるものではありません。
よくある質問
研究開発費率は何%以上あれば高いと言えますか?
業種で異なります。本文の例では、医薬品の第一三共が約22〜27%、自動車部品のデンソーが約7.7〜10%、精密機器のキヤノンが約7.3〜8.6%でした。同業他社と自社の推移で比べます。
研究開発費率が下がったら、投資を減らしたのですか?
金額と売上の両方を見ます。キヤノンは、2020年12月期から2025年12月期に率が約8.6%から約7.3%へ下がりましたが、研究開発費は約2,723億円から約3,393億円へ増えていました。売上の伸びのほうが大きかったためです。
研究開発費はどこで確認できますか?
有価証券報告書の「研究開発活動」の項目と、損益計算書の注記で確認できます。ラジ株ナビの数値は有報の研究開発費を売上高で割ったもので、会計基準による費用化の範囲の違いは調整されていません。
関連用語
データの出典と更新
この用語解説はEDINET財務データ、決算書分析、株式投資で一般的に使われる財務指標の定義をもとに整理しています。最終更新日: 2026-11-01。
著者・運営者
本ページは、ラジトレが運営するラジ株ナビ編集方針に基づき、日本株の財務分析、EDINETデータ、決算短信、配当情報をもとに作成しています。