EV/EBITDAとは?企業価値を償却前利益で見る割安指標

EV/EBITDAとは

EV/EBITDAは「事業全体の価格が、償却前利益の何年分か」を見る指標です。PERより借入や現金を考慮しやすく、買収や同業比較で使われます。

計算式

EV/EBITDA = 企業価値(EV) ÷ EBITDA

使い方

  • 同業内で企業価値の割高・割安を比較する
  • 有利子負債や現金を含めた評価を見る
  • 設備投資型企業の収益力評価を補助する

注意点

  • 設備更新投資の負担は反映されにくい
  • 業種によって妥当な倍率は異なる
  • 成長性や財務リスクもあわせて見る

EV/EBITDAの読み方

EV/EBITDAは、会社全体の値段にあたる企業価値(EV)が、本業の稼ぐ力であるEBITDAの何年分に相当するかを示します。EVは、株式の時価総額に有利子負債を足し、手元の現金を引いた金額で、「その会社を丸ごと買うのにいくら必要か」を表します。EBITDAは営業利益に減価償却費を足した、償却前の利益です。

PERとの違いは、借入と現金を評価に含める点です。PERは株主の取り分である純利益だけを見るため、借入の多い会社と少ない会社で同じ土俵に立てません。EV/EBITDAは借入も現金も織り込むので、財務構成の違う会社を同じ尺度で比べられます。また、減価償却や支払利息、税金の違いにも左右されにくく、設備の重い会社の比較に向きます。数字が小さいほど、稼ぐ力に対して割安と見られます。

実在企業で見るEV/EBITDAの計算例

ここでの計算は、決算時点の時価総額を「純利益×PER」で概算し、そこからネットキャッシュを引いてEVを求める簡易版です。J-Quantsなどの株価は使っていません。

JR東海(9022)の2026年3月期は、純利益約5,529億円にPER7.15倍を掛けると時価総額は約3兆9,530億円です。ネットキャッシュはマイナス約5,625億円(有利子負債約1兆3,081億円)なので、EVは約4兆5,155億円。EBITDAは営業利益約8,302億円と減価償却約2,059億円の合計で約1兆361億円ですから、EV/EBITDAは約4.36倍になります。PER7.15倍と近い水準ですが、時価総額だけで割ったときの3.82倍より大きくなり、借入の分が上乗せされています。

関西電力(9503)の2026年3月期は、純利益約3,801億円にPER7.58倍を掛けると時価総額は約2兆8,808億円。ネットキャッシュはマイナス約2兆9,374億円と大きく、EVは約5兆8,182億円です。EBITDAは約7,759億円で、EV/EBITDAは約7.50倍。時価総額をEBITDAで割ると約3.71倍ですから、借入を含めると倍率は約2倍に膨らみます。PERの低さだけで安いと見ていると、この借入の重さを見落とします。

東京エレクトロン(8035)は反対の例です。2026年3月期の時価総額は純利益約5,745億円にPER29.68倍を掛けて約17兆498億円。有利子負債はなく、ネットキャッシュはプラス約6,641億円なので、EVは約16兆3,857億円と時価総額より小さくなります。EBITDAは約7,059億円で、EV/EBITDAは約23.2倍です。PERの29.68倍より低く見えるのは、手元資金が評価から差し引かれるためです。

業種による水準の違い

電力、鉄道、通信、不動産のように、大きな設備を持ち、借入が大きい業種は、EV/EBITDAが数倍から10倍程度に収まるのが一般的です。半導体製造装置や医薬品、ソフトウェアのように、成長期待が株価に織り込まれやすい業種は、20倍を超えることもあります。

業種が違う会社のEV/EBITDAをそのまま比べても、割安・割高の判断はできません。同じ業種の中で、あるいは同じ会社の過去の水準と比べます。また、銀行・証券・保険などの金融業は、借入が事業の一部であり、EVやEBITDAの考え方がなじまないため、使いません。

よくある誤解

最大の誤解は、EBITDAが現金そのものだと考えることです。EBITDAは減価償却費を足し戻す一方で、設備を維持・更新する投資は引かれません。JR東海や関西電力のように、設備更新に多額のお金がかかる会社は、EBITDAに比べて自由に使える現金が小さくなります。

2つ目は、EV/EBITDAが低いだけで割安と決めることです。関西電力のように、倍率が低く見えても、実際には借入が多いために利益が将来の返済に取られる会社もあります。3つ目は、時価総額の概算の精度です。この記事の計算は期中平均の株式数に基づく近似で、実際の発行済株式数や、決算後の株価とはずれます。

また、EBITDAは営業利益と減価償却費から求められるため、会社が採用する減価償却の方法や、IFRSと日本基準の違いで水準が変わることがあります。異なる会計基準の会社を比べるときは、その違いが倍率にどれだけ効いているかも念頭に置いてください。

他の指標との組み合わせ方

EV/EBITDAの分母であるEBITDAの意味は、EBITDAの用語で確認できます。借入の重さは有利子負債とネットキャッシュで、株主から見た評価はPERで確かめます。設備更新の負担まで見るには、設備投資比率を併用します。

データの出所

EV/EBITDAの計算例は、有価証券報告書(EDINET)をもとにラジ株ナビが整理した財務データ(2026年10月時点)の「純利益」「PER」「ネットキャッシュ」「EBITDA」「営業利益」「減価償却」「有利子負債」から取っています。対象はJR東海(9022)、関西電力(9503)、東京エレクトロン(8035)のいずれも2026年3月期です。時価総額は純利益にPERを掛けた概算、EVは時価総額からネットキャッシュを引いた値で、実際に市場で付いている株価からの計算とは異なります。特定の銘柄の売買を勧めるものではありません。

よくある質問

EV/EBITDAは何倍が割安ですか?

業種で大きく違い、一律の基準はありません。本文の例では、JR東海が約4.36倍、関西電力が約7.50倍、東京エレクトロンが約23.2倍でした。同じ業種の会社や、同じ会社の過去の水準と比べます。

PERではなくEV/EBITDAを使うのはどんなときですか?

借入の大きさや手元資金が会社ごとに大きく違うときです。関西電力は、時価総額をEBITDAで割ると約3.71倍ですが、借入を含めたEV/EBITDAは約7.50倍でした。借入の重さを織り込んだ比較ができます。

EV/EBITDAの弱点は何ですか?

設備更新などの投資負担を反映しない点です。EBITDAは減価償却費を足し戻した利益なので、設備に多額のお金がかかる会社は、実際に自由に使える現金がEBITDAよりかなり小さくなります。設備投資比率やFCFとあわせて確認します。

関連用語

データの出典と更新

この用語解説はEDINET財務データ、決算書分析、株式投資で一般的に使われる財務指標の定義をもとに整理しています。最終更新日: 2026-11-01。

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